新編・伊勢物語 第九百六十三段 酒の席の話題 星原二郎第九百六十三段 酒の席の話題 昔、男ありけり。今も男あり。 その男、親しき友ありて 或る日 久し振りに会ひて飲む約束を交はしけり。 会ひ得し時の酒の話題の一つに その友の喜びそうなる話題を用意し臨みけり。 しかして当日は四方山話に花が咲き したたかに飲みて帰り来たりて 歌を この事を 相手に言はば 喜ばむ 会ひ得し時し その事忘るる と詠み 悔しき思ひ 湧き来たれども 時 既に遅きに失し 諦めけり。