第九百五十五段 釣石神社の御神体
昔、男ありけり。今も男あり。
その男、平成三十年八月十八日の
刈谷市文化協会 短歌部会の月例歌会に
次の作
落ちさうで 落ちることなき 御神体
釣石神社の 大石に祈む
を事前に提出し臨みけり。
釣石神社は宮城県石巻市にある神社にて
海岸からもほど近き断崖に半球状の露出せし
巨大なる嚴が御神体の神社なり。
先の東日本大震災の折には
すぐ近くまで津波押し寄せしが
崩れることなく鎮座ましまし
合格祈願(落ちることなきゆゑ)の霊験あらたかなる
神社とかの地域にては有名なれども
遠きみちのくの小さき神社なれば
刈谷の短歌の会員のほとんどが知らず
共感を得る事 能はず
低き得点に留まりけり。
さてその男、彼の神社にて何を祈願せしか
人生の落後者にならざる事か
何かの受験を控へてか
各短歌大会での入選を願ひてか
詳らかにする事なく歌会会場を罷り出でけり。