新編・伊勢物語 第九百六段 兄の葬儀 星原二郎第九百六段 兄の葬儀 昔、男ありけり。今も男あり。 その男、四十歳の折に、四十二歳の兄を病に喪ひけり。 葬儀済ませし後、悲しみにうちひしがれつつも、 供養にと挽歌を 夜くだち めざめて兄を 想ふ時 人に見せざりし わが涙落つ 墓石の 底ひの小暗き 土の中が 還る処か み骨撒きつつ と 詠み 冥福を祈りけり。合掌。