新編・伊勢物語 第八百九十三段 曼荼羅寺の門前 星原二郎第八百九十三段 曼荼羅寺の門前 昔、男ありけり。今も男あり。 その男、平成三十年の藤の花の盛りの頃、尾張の国は 江南の里の曼荼羅寺へと藤の花を賞でに行きけり。 行きて、歌を 曼荼羅寺 阿吽の仁王の 代りとて 門(かど)の大椋 対に立ちます と、詠み 人さはに賑ふ境内の盛りと匂ふばかりの 藤の花房を賞で巡りしかど、藤の歌は浮かばざりけり。