新編・伊勢物語 第八百六十四段 友との約束 星原二郎第八百六十四段 友との約束 昔、男ありけり。今も男あり。 その男筒井筒の友を癌にて喪ひけり。 越後生まれの友にてありければ、かのふるさと越後へ 行かむ約束を生前にしにけり。 約束を守れぬまま、幽明を異にしにければ その男ひとり旅に村上へと行き、 歌を 日本海に 沈む夕日を 眺めむと 友との約束 今し果たせり と 詠み 涙、流るるにまかせ 夕日を見続けけり。