新編・伊勢物語 第八百六十三段 千の風になりたる友 星原二郎 第八百六十三段 千の風になりたる友 昔、男ありけり。今も男あり。 その男、筒井筒の友を癌にて喪ひけり。 生前にその友のふるさとの白馬蓮華温泉に行く 約束をせしが果たさざりけり。 しからば、友を偲ばむとひとり行きけり。 白馬蓮華温泉は山奥なれば、登り行く途中 歌、浮かびきぬれば 千の風に なりたる友と 語らむと 北アルプスの 山登りゆく と 詠み 声の限りに友の名前を幾度も 幾度も叫び続けけり。