新編・伊勢物語 第八百六十二段 蓮華温泉に友を思ふ 星原二郎第八百六十二段 蓮華温泉に友を思ふ 昔、男ありけり。今も男あり。 その男、此の年の一月一日、親しき大学時代の友、 食道癌にて逝きたれば、生前に約束の蓮華温泉へと ひとり行きけり。 行きて歌を 千の風に なりたる友よ 語らむと 北アルプスの 山登りゆく 好みしは ビールと知るゆゑ 持参せし 缶の口開け 友へ供へつ 雲の間に 亡き友ゐむと 思はれて 限りを知らに 幾度も叫(おら)ぶ と詠み 友の冥福を祈りけり。合掌。