新編・伊勢物語 第八百五十八段 山の奥津城 其の壱 星原二郎 第八百五十八段 山の奥津城 其の壱 昔、男ありけり。今も男あり。 その男、此の年の一月一日、親しき大学時代の友 食道癌にて逝きたるを桜の咲く頃に知り 供養に越後の国は姫川上流の 山の奥津城へと行きけり。 行きて、歌を 登りゆく 山の斜への 道の辺に 蕗の薹あまた すがた見せつつ 雪多き 年なればなほ 一メートル余り ありと伺ふ 山の奥津城 逝きてより 平家落人の 末裔と 知らされ拝む 山の奥津城