第八百二十九段 長久手の床几石
昔、男ありけり。今も男あり。
その男、平成三十年の春
小牧長久手の合戦の折、徳川家康公が陣を敷きたる
色金山へと行きけり。
行きて山頂にある家康公が床几代はり腰を掛け
軍議を開きたると伝はる床几石に座り
歌を
長久手の 色金山の 床几石
家康に倣ひ われも腰据う
長久手の 古戦場跡の 家康の
床几石とな 春おぼろなり
と 似通ひたる歌を二首詠みしかば
本来なれば推敲を重ね、どちらかの一首を取り
片方の一首を没とするのであるが
今回は推敲 思ふに任せず
一首を没にする事 忍び難ければ
敢へて二首載せ聡明なる読者子に
優劣の判定、及び推敲を願ひ申し上げる。
さてさて、優劣と推敲は兎も角
合戦の行はれたる天正十二年の四月に
タイムスリップしたる感覚に襲はれ眼を閉ぢけり。