第八百二十八段 師の歌にエロスの香り
昔、男ありけり。今も男あり。
その男、平成三十年三月
その男の所属する短歌結社「桃」の
昭和四十四年三月号(通巻第百七十八号)を拝読し
岐阜の山本春子先生の『宴』と題する連作の中の一首
「わがうちの 花うとましと 思へども
萎えぬものを すべなかりけり」
を読みて歌を
師の歌に エロスの香り 漂ひて
四十なかばの 女盛りか
と詠みけり。生前に聞きたる話によれば
その当時、熱烈なる恋愛関係にありし男性と
別離の辛き経験を経て多くの作を遺しけり。
相手は妻子有る同僚の教師なりしかは
定かならねども、今風に申せば不倫に近き関係と覚ゆ。
作の四句目は珍しく字足らず。
されば僭越ながら添削し「燃えゐるものを」が
よからむと思ひけり。
原作を活かすとすれば「萎えぬこころを」は
如何であらうか?
「わがうちの花…」とは
作者の女性としての【性】の暗喩とぞ覚ゆ。