新編・伊勢物語 第七百九十六段 七本のマフラー 星原二郎第七百九十六段 七本のマフラー 昔、男ありけり。今も男あり。 その男、平成三十年二月のつごもり 冬が去らむとする頃 この冬に愛用せしマフラーに 思ひを寄せて歌を マフラーは 七本ありて それぞれに それぞれの女(ひと)の 思ひ出温(ぬく)し と 詠み 出会ひと別れを懐かしみ 小説家の井伏鱒二氏によるの唐代の詩人 于(う)武(ぶ)陵(りょう)の漢詩「勧酒」の一部である 「花発多風雨 人生足別離」 の意訳の 「花ニ嵐ノタトヘモアルゾ サヨナラダケガ人生ダ」 を名訳と肯(うべな)ひけり。