新編・伊勢物語 第七百九十七段 土岐の柿野温泉のつる屋の湯 星原二郎第七百九十七段 土岐の柿野温泉のつる屋の湯 昔、男ありけり。今も男あり。 その男、平成三十年二月の或る日 美濃の国は土岐の柿野温泉へと行きけり。 行きて歌を 百(もも)岐(き)年(ね)の 美濃の山里 柿野なる つるの出(い)で湯 つるつるぬらり と詠み 湯の質 なかなかの物と覚ゆれど 建物など、昭和の時代の風情そのままなれば いささか寂れたる感 まぬがれる事 適(かな)はざりけり。 (註)百岐年とは美濃にかかる枕言葉にて その由来 詳(つまび)らかならず