第六百九十二段 虚無主義(ニヒリズム)
昔、男ありけり。今も男あり。
その男、漫画家の白土三平氏を生涯の心の師とも
カリスマとも仰ぎけり。
先生の代表的名作「忍者武芸帖」を読みしは
高校生の時なり。
爾来五十有余年、折につけ読み返しけり。
しかして、六十の半ばを
越へしころ、読み返し
歌を
人生の とどのつまりは 虚無主義
砂塵の中行く 重太郎の眼
と 詠み、主人公の影丸、および他の多くの
重要登場人物が次々と死んでゆく中
準主役ともいへる
岩見重太郎が独り残され
大砂塵が吹き荒れる中で
立ち去り行く
かのラストシーンを肯ひけり。