新編・伊勢物語 第七百六十四段 緑寿とぞ 星原二郎第七百六十四段 緑寿とぞ 昔、男ありけり。今も男あり。 その男、平成三十年の新春 自らの老いの境涯を思ひ 歌を わが心の おもむくままに 従ひて 矩(のり)を踰(こ)えずと 言ひ難けれど と詠みけり。 孔子の論語に曰く 「七十にして、心の欲(ほつ)する所に従へども 矩(のり)を踰(こ)えず」あり。 その男の齢 六十六歳なれば 近ごろは緑(ろく)寿(じゅ)の祝ひとぞ 申すらし しかれど 達観に至らぬは致し方無きとぞ覚ゆ。