新編・伊勢物語 第六百九十五段 友の逝去を悼みて詠める挽歌(前編) 星原二郎第六百九十五段 友の逝去を悼みて詠める挽歌(前編) 昔、男ありけり。今も男あり。 その男、平成二十九年の秋十一月 莫逆の友を急病に喪ひて 其の葬儀に臨み弔辞に歌を詠みけり。 問ひ掛けに 眼(まなこ)み開き 応へしか 「とん平」「とん」と 吾は呼びつづく 死に近き 友を見舞ひて 掛く言葉 「共に再び 酒飲(の)ままし」と 汝が命 奪ひしものは 酒なれど 酒もて送らむと 今宵ひとり酌(く)む *「とん平」「とん」とは、その男の友の 愛称なり。