新編・伊勢物語 第六百七十二段 鞠子の宿のとろろ汁 星原二郎第六百七十二段 鞠子の宿のとろろ汁 昔、男ありけり。今も男あり。 その男、平成二十九年十月 駿河の国の東海道五十三次の二十番目の宿場の 鞠子の宿の丁子屋へと行き 名物のとろろ汁を食し 歌を 麦飯に 白味噌の出汁の ととろかけ すすれば浮かぶ 好みたる父 蕉翁も 弥次喜多さんも すすりたる 今に変らぬ 鞠子のとろろ 食し足りて 鞠子の宿の とろろ汁 貴女(あなた)とふたり 旅は楽しも と詠み オノマトペにて言へば ズルズルと音を立てて 噛まず食し終へけり。