第六百六十八段 久延寺の夜泣石
昔、男ありけり。今も男あり。
その男、平成二十九年十月
駿河の国は茶畑の続く掛川の小夜鹿にある真言宗の
古刹 久延寺を参り
歌を
お石とふ 女の恨み 籠りゐむ
夜泣石こそ 触れ難きけれ
と詠みけり。
夜泣石の伝承とは「昔、近くの身重の女が小夜の中山で賊に襲われ殺されたが、女の信ずる観音様が僧侶となり現れ、腹の子を取り出し、近在の女に預けて飴で育てさせた。その子は成人し常に「命なりけり 小夜の中山」と口ずさみ諸国を巡り、つひに池田の宿で仇を討ち果たしたといふ。夜泣石は女の魂がのりうつり夜ごとに泣きたりと伝はりぬ。