新編・伊勢物語 第六百四十四段 すすき野を行く山頭火 星原二郎第六百四十四段 すすき野を行く山頭火 昔、男ありけり。今も男あり。 その男、平成二十九年の秋 三重県と奈良県の 県境に広がる曽根高原へと行きけり。 行きて、歌を すすきすすき すすきの原の 一面が 風に靡きて 山頭火ゆく と、詠みけり。見渡す限りに広がる 銀の穂が輝く すすきの原を行く、まぼろしの種田山頭火を見しと 思ひけり。網代笠を深く被りし奥のロイド眼鏡の瞳 異様に光を放ちけり。