新編・伊勢物語 第六百三十三段 祠の野菊 星原二郎第六百三十三段 祠の野菊 昔、男ありけり。今も男あり。 その男、平成二十九年の秋も酣(たけなは)の候 所用にて通りかかりし道の傍らに目を遣りて 歌を 道の辺の 小(ち)さき祠の この野菊 願ひ託して 供へられけむ と、詠み この近在の信心篤き者のささやかであろう 願ひ事が叶ふことを その男もまた願ひ跪(ひざまづ)きけり。