第五百九十一段 東日本大震災の歌 其の壱
昔、男ありけり。今も男あり。
その男、平成二十九年七月
刈谷市文化協会短歌部会の創立四十周年記念の
合同歌集『加吉都』に平成二十三年三月十一日に
起こりたるの東日本大震災の折の連作を犠牲者の
慰霊と鎮魂の思ひを込め選びけり。
連作は大震災の二年後の平成二十五年の初夏
東北の太平洋沿岸を巡りて詠みたるものなり。
安達太良の 麓の棚田の 苗そよぐ
秋来たりなば 豊かに実れ
山を越え 川を渉りて みちのくの
海辺の町を 巡り祈るも
三陸の 海に祈らむと 時を得て
ひとり来にけり 歌捧げなむ
はつ夏の 日差しの下に 三陸の
海静かなり 彼の日思ほゆ
いにしへゆ 綿津見の神の 統べたまふ
三陸沖は まほろばの海