新編・伊勢物語 第五百八十四段 鞠子の宿のとろろ汁 星原二郎第五百八十四段 鞠子の宿のとろろ汁 昔、男ありけり。今も男あり。 その男、東海道五十三次の鞠子の宿の丁子屋へ行き とろろ汁を食べ 歌を 麦飯に 白味噌の出汁の ととろかけ すすれば浮かぶ 好みたる父 蕉翁も 弥次喜多さんも すすりたる 今に変らぬ 鞠子のとろろ 食し足りて 鞠子の宿の とろろ汁 君とし食(は)めば 旅は楽しも と詠み 江戸の代と変はらぬ味はひと 覚ゆれば いと満ち足りたる心地しにけり。