新編・伊勢物語 第五百八十五段 岡部の宿にて 星原二郎第五百八十五段 岡部の宿にて 昔、男ありけり。今も男あり。 その男、東海道五十三次の岡部の宿へと行きて 歌を 江戸の代の 岡部の宿の にぎはひも 今は昔と 静かなる町 江戸の代の 暑さ寒さを 防ぐ技 蔀戸の知恵 頷き聞きつ 筧より 落つる水滴 甕に受け 水琴窟の さやかなる音 竹筒に 耳を当て聴く 水琴窟 庭師の技を 誉めざらめやも と詠み 東海道五十三次の二十一番の 大旅籠屋「柏屋」を罷り出でけり。