新編・伊勢物語 第五百八十三段 宇津の谷峠にて 星原二郎第五百八十三段 宇津の谷峠にて 昔、男ありけり。今も男あり。 その男、掛川にある宇津の谷峠に行きて 歌を 江戸の代の 大名行列 如何にして 宇津の谷峠 越えゆきたるや 駿河なる 宇津の山路の うつつにて 旅の歌びと あまたが浮かぶ 莫大の 費えを用ひ 大名の 参勤交代 江戸へと向かふ と詠み 本家の伊勢物語にても 舞台となりたる宇津の谷峠を 歩き行きけり。