第五百八十段 西行法師の小夜の中山の歌碑
昔、男ありけり。今も男あり。
その男、平安時代の歌の僧 西行法師をいたく敬ひ
彼の歌を折にふれ唱へけり。
数ある彼の名歌の中でも特に
「年たけてまた越ゆべきと思ひきや命なりけり小夜の中山」
に憧憬やみ難く小夜の中山を三度訪ね
歌を
慕ひやまぬ 西行法師の おん跡と
歌碑を拝む 小夜の中山
老ゆれども 使命を重む 西行の
意志のつよさや 見倣ひ生きむ
と詠み その男の知る限りに於いて
日本一大きな歌碑を仰ぎ続けけり。