新編・伊勢物語 第五百七十九段 富士を仰ぐ西行法師 星原二郎 第五百七十九段 富士を仰ぐ西行法師 昔、男ありけり。今も男あり。 その男、平安時代の歌の僧 西行法師をいたく敬ひ 彼の歌を折にふれ唱へけり。 数ある彼の名歌の中でも特に 「風に靡く富士の煙は空に消え行方も知らぬわが思ひかな」 に心惹かれ歌を 富士を仰ぐ 西行法師の 旅すがた 年ふり止まぬ あぐがれなりき と詠み 「一点の迷ひすら無き歌人」との 或る現代歌人の評を諾ひけり。