新編・伊勢物語 第五百七十五段 嫌はれものの葛 星原二郎第五百七十五段 嫌はれものの葛 昔、男ありけり。今も男あり。 その男、平成の二十九年の夏、八ヶ岳の麓にある ある縄文の遺跡へと行きけり。その広場の周り また道路沿ひに葛の葉 茂れるを見遣りて 歌を 野を蔽ひ 嫌はれものの 葛なれど 暑さにつよく 今日は羨(とも)しも と詠み 炎天下のもと 歩き回りての取材に 疲労困憊の眼には図々しきまでの葛の たくましさに羨望の眼を向けけり。