新編・伊勢物語 第五百七十四段 土偶と蜻蛉と男の鼎談 星原二郎第五百七十四段 土偶と蜻蛉と男の鼎談 昔、男ありけり。今も男あり。 その男、平成の二十九年の夏、八ヶ岳の麓にある ある縄文の遺跡へと行きけり。 その広場に縄文土偶のモニュメントありけり。 たまたま一匹の蜻蛉(あきつ)、土偶の 肩に留まりゐて語り掛けゐるがに見ゆれば、 歌を 縄文の 土偶と語る 蜻蛉ゐて 誘はれ吾も 座に加はりぬ と、詠みけり。しかして、その異色とも思へる鼎談の 内容は「自然環境と文明」論とも聞き及びしが、 発言内容等 定かなる記録を残さざりけり。