新編・伊勢物語 第五百七十三段 国蝶のオホムラサキ 星原二郎第五百七十三段 国蝶のオホムラサキ 昔、男ありけり。今も男あり。 その男、平成二十九年の夏 甲斐の国は八ヶ岳の麓へと縄文時代の遺物調査に行きけり。 調査を終へ博物館を出でると 国蝶のオホムラサキ その男の前を過(よ)ぎりければ 歌を 国蝶の 大紫(オホムラサキ)は 舞姫よ 青き衣装の 羽根あざやかに と詠みしかど スマートホンにて記念写真を撮影する間もなく 視界より消えしを残念に思ひけり。