第五百六十八段 余呉湖の羽衣伝説
昔、男ありけり。今も男あり。
その男、平成二十九年の七月 七夕祭りを前に
近江の国は余呉湖にある羽衣伝説の柳を
見に行きけり。
堂々たる柳の古木にて
歌を
この地にも 羽衣伝説 つたはりて
夏の陽きらめく 余呉湖を見やる
と、詠み
天より舞ひ降り、水浴び遊ぶ
若き天女を物影より見やりて、柳の枝にある
羽衣を隠しし村の伊香刀美といふ若者あり。
天女、羽衣がなくては、天に帰ることが出来ず
その男の妻になり 男の子を生みけり。
その後、隠くされし羽衣を見つけ
男の子を残し 天へと帰りけり。
哀れなるは男の子にて泣き続けけり。
その泣き声を聴きたる菅原是善卿
養子に迎へけり。
この子が後の菅原道真公といふも面白く
柳の古木と余呉湖を見詰め続けけり。