第五百六十段 養子の父親
昔、男ありけり。今も男あり。
その男、もとは老舗の和菓子製造業を営む家柄の次男なり。
先の大戦の前、実子の無き祖父母はわが母を養女に迎へ
先の大戦の後、わが父を養子に迎へけり。
年を経るほどに、三人の子等に恵まれけり。
後年、その父よりトヨタ自動車のエンジニアなりしこと
聞きしを思ひ出し歌を
自動車の エンジニアたりし わが父よ
菓子屋の養子と なりて吾あり
と 詠み 人生の運命ともいへる
綾の織り成す文様の変化を面白き
マイヒストリーのドラマとも思ひけり。