新編・伊勢物語 第五百五十八段 花菖蒲苑にて胡蝶の夢 星原二郎第五百五十八段 花菖蒲苑にて胡蝶の夢 昔、男ありけり。今も男あり。 その男、平成二十九年六月 近くの知立神社の境内にある 花菖蒲苑へと行きて 歌を 花菖蒲 妍(けん)を競ひて 咲きたれば 胡蝶の夢と 遊べや遊べ と詠みけり。 或る男、或る朝 目覚めると巨大なる毒虫になりゐたるは フランツ・カフカの小説『変身』にて、有名なれど 中国の古典の「荘子」の夢にて胡蝶になりたるに肖(あやか)り 現実(うつつ)と夢の区別なく花菖蒲苑に遊ぶ 胡蝶も面白しと思ひけり。