第五百三十八段 山田温泉大湯の熱湯
昔、男ありけり。今も男ありけり。
その男、平成二十九年五月下旬
信州は高山村の山田温泉大湯へと行きけり。
山田温泉大湯は かの小林一茶、会津八一、森鴎外、
与謝野晶子、太田水穂、種田山頭火など錚々たる文人の
訪れし外湯なり。
その男も山田温泉大湯の熱湯にひたり歌を
人間の 煮物の出来る 熱さなり
山田温泉の 熱湯に三分
と詠み 源泉温度七十度、湯船に掛け流し時四十四度の
熱湯に耐へ切れず、村の古老らが平気なる顔をして
高温の源泉を楽しみゐるのを横目に早々と出でにけり。
されど、かの錚々たる文人に並び
足跡と歌を残しし事に満足を覚えけり。