新編・伊勢物語 第五百三十七段 里芋の葉の露を集め 星原二郎第五百三十七段 里芋の葉の露を集め 昔、男ありけり。今も男ありけり。 その男、平成二十九年の初夏を迎へむ頃 幼き頃の祖父の言葉を思ひ出し 歌を 朝まだき 里芋の葉の 露集め 墨摺り手習ひ 祖父は奨(すす)めき と、詠み 書道上達の方法なりと、教へられしが 実行せざりしが、今も拙き字を書く遠因ならむと 反省すれど、時 既に遅かりしと思ひけり。 しかして、短歌会の折々に掲示の歌の短冊に 拙き字の恥を晒し続けけり。