新編・伊勢物語 第五百三十六段 かきつばたの段 星原二郎第五百三十六段 かきつばたの段 昔、男ありけり。 今も男あり。 その男、かって鰥夫(やもを)となりて三人(みたり)の子等と住みけり。 そのなかで長女、中学生となり 地元ゆかりの 「伊勢物語」を学びけり。ある宵、隣室より 朗読の声聞こえ来ぬれば、父と娘にて 内容を話しけり。 その後に歌を 「かきつばた」の 段暗誦(そら)んずる 娘なれば 歌のことにて しばし話しぬ と詠みて、意見の違ひあらば 岩波書店発行の「日本古典文学全集」の 「伊勢物語」の巻を確認のためひもときにけり。