新編・伊勢物語 第五百八段 荘川桜(後編) 星原二郎 | isemonogatari2のブログ

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第五百八段 荘川桜(後編)

 

 ふたもととも 東彼岸(あづまひがん)の 桜なり

   色ほの白く 咲き極まれる

 

 やうやうに 満開の時に 会ひ得れば

   涙ぐましも 三たび訪ひ来て

 

 幹太く (かほ)とも見ゆる 皺あまた

   古武士然たる 桜なりけり

 

 四百年 古りしといへど 枝々に

   花満ちてあり 衰へ知らず

 

 老いもまた よきかなと申し 侍るがに

   荘川桜 陽に映えて咲く

 

 水底に 沈みし村の 年々の

   春咲き継ぎし 桜ふたもと

 

 たまたまに テレビ番組の 制作か

   撮影に遇ひ 共に仰ぎぬ

 

と、詠み 満開の頃、元の里人が集ひ 宴に

湖底のふるさとを偲ぶといふを思ひ浮かべけり。