第五百五段 佐渡島にて上皇を思ふ
昔、男ありけり。今も男あり。
その男、平成二十九年の春、佐渡島へと行きけり。
順徳院の御所跡を訪ねて、歌を
流されて 佐渡に上皇 薨れば
無念の残る 御所の跡かな
上皇の 無念の残る 黒木御所
狭き跡地に 桜咲かせ継ぐ
上皇の お手植ゑと伝はる 御所桜
白き二本 哀れを誘ふ
と詠みけり。順徳院といへば百人一首の「ももしきや
古き軒端の しのぶにも なほあまりある 昔なりけり」
が、有名であるが、如何なる思ひを抱きてこの島に
生を終へしかと偲べばまさに なほあまりある 昔と
思ひけり。