第五百二段 佐渡島にて、朱鷺を訪ねる
昔、男ありけり。今も男ありけり。
その男、平成二十九年の春、佐渡島へと行きけり。
日本の天然記念物である日本産の朱鷺を生前に見たかったのであるが、行く機会を得てフェリーに乗り込み島へと渡りけり。
して、まづ朱鷺保護センターへと行き
歌を
赤き顔 白き体の 朱鷺なりき
ニッポニア・ニッポン 日本の鳥ぞ
雌は「キン」 雄は「ミドリ」の 剥製を
見るは悲しも 最後の朱鷺よ
と詠み 人災によりて絶滅に追いやられし朱鷺の最後の
番の剥製を憐れと思ひ、遺伝子的には同一種の中国産の
朱鷺の完全なる自然復帰を願ひけり。