新編・伊勢物語 第五百段 杏の里 星原二郎 第五百段 杏の里 昔、男ありけり。今も男ありけり。 その男、平成二十九年の卯月の中浣 信濃の国は千曲の杏(あんず)の里へと行きけり。 行きて歌を 更埴の 杏の里に 朝日さし 耀ひ映えて うつつともなし 神仙の 桃源郷を 思はせて 更埴の地に 杏はな咲く と詠み 見頃なれども早朝なれば人もまばらにて 一目千本ともいはれる杏の里の美しさを 心ゆくまで愛(め)でけり。