第四百九十五段 亡き友の墓参
昔、男ありけり。今も男ありけり。
その男、筒井筒の親友を
平成二十一年一月一日に喉頭癌にて喪ひてをり。
喪ひての後に平家の末裔であり、離婚経験者ながら
将来を誓ひし女人ありと知りけり。
小谷村にて友の墓参を済ませ帰らむとせし時、
その奥津城のほど近き処に桜ありて吹雪けり。
さすれば男、亡き友を偲びて歌を
これの世と あの世の境 すでになく
桜吹雪の たそがれをゆく
と 詠みて あの世とこの世の境さだかならぬ
ひと時を友と過しけり。