新編・伊勢物語 第四百七十四段 南木曽の温泉にて 星原二郎第四百七十四段 南木曽の温泉にて 昔、男ありけり。今も男ありけり。 その男、平成二十九年の早春 信州は南木曽町の南木曽温泉郷へと行きけり。 あららぎ温泉の湯に入り 歌を 木曽に来て 木曽の檜の 湯船にぞ わが身沈めて 鶯を聞く と詠み 木曽が生みたる偉大なる文学者の 島崎藤村先生の名作「夜明け前」の 書き出しの一節「木曽路はすべて山の中である…」 を想ひ浮かべつつ寛ぎの時を過ごしけり。