第四百六十三段 青い目の人形(後半)
ひそかにも 隠し守り来し 人のゐて
今に残れる 三百三十五体
それぞれが 悲劇を超えて 生き来しか
あどけなきままの 表情にして
数奇なる 運命たどり 今ここに
傷みてあれど 生きのびにけり
いきさつを 語る媼も 老いにつつ
古りし人形 なほ澄む瞳
戦後はや 七十年は 経なむとす
人の心に 消えぬ人形
思ひ出を 語るがに小さき 人形なれ
グレース・エッサの 唇愛らしき
童謡の 「青い目の人形」 雨情作
歌詞は悲しく 口づさみつつ
と 詠み 今も愛らしき「青い目の人形」に
こちらが、いっぱい涙を浮かべけり。