新編・伊勢物語 第四百五十四段 辰野の道祖神(後半) 星原二郎第四百五十四段 辰野の道祖神(後半) 高砂の 共に白髪の 塞の神 これよりのちも 仲よくましませ いかならむ 工(たくみ)の彫りしか わかたねど 丹精こもる 鑿(のみ)の跡かな 刻まれし 永正二年ゆ 五百(いほ)年を 経りて苔むす 塞の神様 伊邪那岐の 黄泉(よみ)のかへりの 御(み)杖より 禍ひ塞(ふせ)ぐ 神成りませり 石なれど 五百年ここに 立ちませば 宿れるいのち あがめ拝(をろが)む と詠み 福寿草の咲き初めたる 残雪多(さは)の沢底の里を去りけり。