新編・伊勢物語 第四百四十段 流氷(後半) 星原二郎第四百四十段 流氷(後半) 流氷と 流氷軋むを 「哭(な)く」といふ 如何なる音か 聞きたかりけり をろしあの アムール河に 氷りしが 漂ひ流れ 到り重なる アムールの 河の氷と 知りゐれど 齧りてみれば 塩の味する 網走の 能取岬の さきに佇ち 遮(さえぎ)るるものなき 流氷の原 見はるかす かぎり氷の 海にして 日光(ひかげ)を返し 眩しかりけり と 詠み 冷え切りし身体を温めむと宿へ向かひけり。