新編・伊勢物語 第四百三十五段 三河知立(前半) 星原二郎第四百三十五段 三河知立(前半) 昔、男ありけり。今も男ありけり。 その男、平成二十九年に 三十年近く三河知立に 住み古ると思ひ至りて、歌を 明六つと 暮六つの鐘 聞こえ来る この町に栖み 老いゆくらしも わが町は 古き宿場の 池(ち)鯉(り)鮒(ふ)にて 脇本陣跡に 三十年を棲む 東西に 名鉄本線 南北に 三河線ありて 便よきわが市 馬市の たちしあたりの 辻にして 馬の代はりの トラック行き交ふ 東海道 五拾三次の 一里塚 行き来のひとの あまたが浮かぶ