新編・伊勢物語 第四百三十一段 徳山ダム 星原二郎第四百三十一段 徳山ダム 昔、男ありけり。今も男ありけり。 その男、平成二十九年の厳冬、揖斐川上流に 如何程の広きダム湖なりやと思ひをいだき 徳山ダムを訪ね行きけり。 行きてダム湖の湖底に沈みたる、役所・小学校などなどを想ひ 村の歴史を知り、ダム建設反対運動の挫折を知り 集団移転の悲喜こもごもを知り 村に戻りし高齢者の存在を知り、歌を 水底に 縄文よりの 村ひとつ 歴史を沈め ダムは成りたり と、詠み 貯水量 日本一の水を満たしたる 水面を見詰けり。