新編・伊勢物語 第四百二十段 諏訪にて(後半) 星原二郎第四百二十段 諏訪にて(後半) 赤彦の 諏訪湖の歌を 知るからに 御神(おみ)渡(わた)りのさま 直(ただ)に見たしも 絹王の 片倉翁の 遺したる 湯の洋館は さびてよろしも 足(あな)裏(うら)に 当たる小石も 心地よく 片倉館の 湯は熱かりき 老軆の 背(せな)の彫り物 若き日を 物語らせて 洗ふ男をり お互ひに 何処(いづこ)より来しと 名告り合ひ 温泉談義に 湯の花咲くも と、詠み 歩み来し過去の人生に大きな違ひはあれども、《温泉好き》の共通話題に共感を覚へ、湯にのぼせるのも忘れ話し込みけり。