新編・伊勢物語 第四百十九段 諏訪にて(前半) 星原二郎第四百十九段 諏訪にて(前半) 昔、男ありけり。今も男ありけり。その男、平成二十九年の真冬を迎へる頃、信濃の国の諏訪湖へと行きけり。行きて、歌を 数ふれば たしかに八つの 八ヶ岳 頂白く 冬の日に映ゆ 尖(とがり)石(いし)の 小林(をばやし)の中を 歩みつつ 縄文の代に 入りゆく思ひす 菱ひとつ 拾へば広き 諏訪湖にて 縄文びとの くらし浮かび来 大地(おほつち)の 底ひ深くに 滾りては 溢れ噴き揚ぐ 間歇(いで)泉(ゆ)の柱 埴輪の 馬の形の 雲浮きて 諏訪のいで湯に 仰ぐ冬空