新編・伊勢物語 第三百九十六段 有馬皇子を慕ひて 星原二郎第三百九十六段 有馬皇子を慕ひて 昔、男ありけり。今も男ありけり。その男、万葉歌人にて、政争の犠牲者にして悲劇の主役となりたる有馬皇子を慕ひ、最後の旅の舞台を順を追ひ訪ねけり。行きて歌を 藤白の 熊野古道を 歩み来て 皇子(みこ)の御墓に 額づく吾は 皇子を祀る み社の辺の 万葉の 歌碑誦(ず)すほどに こみあぐるあり 十九歳の 皇子謀られしは 明白にて 曽我赤兄を 吾は赦さず 藤白の 御坂険しみ 越えがたく 吾は還りぬ 汗流しつつ と 詠み 有馬皇子のおん魂をお慰め奉りけり。