新編・伊勢物語 第三百九十五段 藤白坂へ 星原二郎第三百九十五段 藤白坂へ 昔、男ありけり。今も男ありけり。その男、平成二十八年の初冬、紀州へと行きけり。行きて歌を 雲間より 冬の朝光(あさかげ) 差しいでて 旅立つ吾は 無事を祈りぬ 旅行くは 犬飼先生と ふたりなる 思ひ持ちつつ 『万葉の旅』 紀の川を 渡ればいよよ 和歌山にて 有馬皇子の み姿顕(あら)はる 藤白の 山より見下ろす 海南市 埋め立て進みゐて 昔思ほゆ と 詠み 故・犬飼毅大阪大学名物にして名誉教授と共に行く旅を楽しみけり。