第三百六十二段 矢作の弓矢
昔、男ありけり。今も男ありけり。
その男、矢作川に興味を持ち歴史を調べけり。
しかして、遠き昔を思ひ歌を
ここの矢を 日本武尊は 用ひまし
いくさに勝ちて 賜りし名ぞ
この川の 遠きいにしへ 思ひつつ
汀に佇てば 浪は立つなり
矢づくりの 技にたけたる 族にて
治めつづけ来し あごひげの長
あごひげの 長の面輪の 浮かび来ぬ
鋭きまなざしが 流れを見入る
と、詠み 悠久の時の間を流れ続ける
矢作川を「かは」だけに、「かは」らぬものと
思ひ、これからも不変であり続けることを願ひけり。